研究詳細- research -

個性豊かな藻類研究!

各チームの研究内容

チーム1 「藻類増殖能アップ+持続的生産」の研究概略

 新規に発見されたヒトエグサの単細胞培養系の「藻類-細菌共培養実験系」を開発し、ゲノム編集法および遺伝子導入法を用いて海藻の増殖メカニズムを明らかにします。得られた知見に基づき、高効率で多用途に利用可能な藻類バイオマス生産技術を確立します。並行して、最適化された藻類バイオマス生産技術を組み込んだ「完全閉鎖系の陸上養殖システム」を開発します。魚介類養殖の飼育水中に排泄されるリン酸や硝酸などを藻類に吸収?除去させることで、浄化槽を必要としない新しい陸上養殖システムの構築が期待されます。

アオノリの集塊種苗アオノリの集塊種苗

藻類増殖アップ+持続的生産(1)藻類増殖アップ+持続的生産

チーム2 「藻類有用物質生産能アップ」の研究概略

 まず、藻類感染ウイルスを新規に単離することにより、世界に例を見ない「藻類ウイルスリソース」を構築します。これにより、ウイルスの生物進化ならびに生態学的なウイルスの役割に関する基礎的研究を行うと同時に、そのリソースを用いることにより、微細藻類を用いた有用物質の大量生産や、医学診断や創薬を目指した応用研究に取り組みます。具体的には、ウイルスリソースより、高発現誘導型のプロモーターならびにターミネーターを検索し、これらを用いることにより、高増殖型遺伝子導入法を開発します。さらに、本法を用いて、ワクチン等の有用物質を高生産する珪藻を新たに創生します。さらに、ワクチンを高生産する藻類を養殖魚の餌に添加するなどして魚類に供することにより、その感染予防効果を検証?最適化します。

赤潮原因藻とそのウイルス赤潮原因藻とそのウイルス

(2)藻類有用物質生産能アップ(2)藻類有用物質生産能アップ

チーム3 「藻類バイオマス処理→有用化合物創製」の研究概略

 藻類を無駄なく使うため、その主成分である多糖(粘質多糖、セルロースなど)および脂質(カロテノイド、グリセリドなど)を有効に使用する方法、さらに、これらから有用物質を創製するプロセスの開発が期待されています。海藻固有の粘質多糖や微細藻類に多く含有するグリセリド等の分解に有効な酵素触媒のメカニズムを遺伝子解析等により解明し、水熱法と組み合わせた藻類変換プロセスを開発します。また、藻類に含まれるセルロースの物性を詳細に評価することで、藻類由来の機能紙および生分解性フィルムの作出を目指します。上記のようなプロセスを経て創出された素材について、薬効解析を行い健康食品や医薬品への応用を検討します。これにより、藻類から希少糖?硫酸化オリゴ糖?ナノセルロースなどの有用化合物、ならびに機能紙?医薬品?フィルム?繊維?プラスチックなどの生分解性材料を創出する技術を確立することで、藻類バイオマスからの新たな価値創造、ひいては「ファイコミクス」活用による地域の製紙産業や水産業などの振興に貢献します。

オゾン酸化装置オゾン酸化装置

(3)藻類バイオマス処理→有用化合物創製(3)藻類バイオマス処理
→有用化合物創製

チーム4 「海藻養殖地域展開と沿岸環境保全」の研究概略

 地域社会に存在する海藻養殖施設について現地調査を行い、その設置の経緯や地域社会との関係、養殖技術を開発した科学研究主体との関係などについてその実態を明らかにします。藻類陸上養殖の地域での展開は、現在までのところ、(1) 地域の主体による事業、(2) 社会的起業、(3) 企業による事業展開の3つのパターンが観察されます。事前情報では、地域主体が事業を担う場合は比較的スムーズに事業が実施されますが、企業、特に地元と関連の薄い企業の進出にはさまざまな問題が起こる場合があります。まず基本情報として、(1)事業内容とその展開過程、内的メカニズム等を実態調査を通して整理する必要があります。それと並行して、(2)地域社会との関係や、沿岸の資源?環境への影響がどのように懸念されているかについてステークホルダーへの聞取調査などを通して明らかにします。最終的には、(3) 地域社会における藻類陸上養殖事業の意義と可能性を検討し、今後の方向性について考えます。

(4)海藻類陸上繁殖の地域展開と沿岸環境保全(4)海藻類陸上繁殖の地域展開と沿岸環境保全