◆大学院医学専攻3年の小笠原史也さん、医学部微生物学講座の大畑雅典教授らの研究成果が、国際誌「Journal of Cellular and Molecular Medicine」に掲載されました

2022年11月24日

 大学院医学専攻(社会人博士課程)3年の小笠原史也さん、医学部微生物学講座の大畑雅典教授らの研究グループの研究成果が、国際誌「Journal of Cellular and Molecular Medicine」に掲載され、2022年10月9日付で電子版が公開されました。

 原発性浸出液リンパ腫は体腔液リンパ腫とも呼ばれ、リンパ節腫大や腫瘤を形成せず、体腔液中で浮遊して増殖するユニークなリンパ腫です。その発症にはがんウイルスであるヒトヘルペスウイルス8型(HHV8)が関与していますが、一方でわが国で発症する症例のほとんどはHHV8陰性であり、HHV8陽性症例とは異なった新しい疾患概念であることが提唱されています。しかしながら、HHV8陰性浸出液リンパ腫の病態解明や標準的な治療法の確立は進んでいませんでした。

 本研究グループは、医学部血液内科学講座との共同研究で、マウスモデルの体内において本リンパ腫が大量の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)(※1)を産生し、血管壁を物質が通り抜ける血管透過性が高まることにより体腔液貯留(※2)をもたらすこと、抗VEGF抗体であるベバシズマブは腫瘍性体腔液の減少とリンパ腫細胞の増殖を抑制することを明らかにしました。

 この研究成果は、わが国で好発するHHV8陰性浸出液リンパ腫の病態形成にはVEGFが深く関与し、これを標的にした治療法が有効であることを示しており、ベバシズマブが新たな治療薬になる可能性があることを明らかにしました。

 

<論文名> Targeting VEGF with bevacizumab inhibits malignant effusion formation of primary human herpesvirus 8-unrelated effusion large B-cell lymphoma in vivo.

<和訳>血管内皮細胞増殖因子を標的とするベバシズマブは生体内において原発性ヒトヘルペスウイルス8型陰性浸出液大細胞型B細胞リンパ腫の腫瘍性体腔液形成を抑制する

 

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(※1)血管内皮細胞増殖因子(VEGF)‥すでにある血管から枝分かれして新たな血管が作り出される生理現象を促し、さらに血管のないところに新たな血管を作り出すことに関与するタンパク質のこと

(※2)体腔液貯留‥体壁と内臓との間のすき間である体腔(主に胸腔、腹腔、心膜腔)に過剰な体液が貯留すること

 

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